目次
元気なうちから老人ホームに入居するのはありなのか
60歳を迎え、これからの人生を考えたとき、老人ホームへの入居を想像する人も多いでしょう。入居を考えるときの悩みとしてよく挙がることは、「どのようなタイミングで入るか」です。
介護が必要になったときに老人ホームの入居を考える方も多くおられますが、判断力など、さまざまなことを考えると元気なうちに入居を決めておきたいものでしょう。結論からいうと、元気なうちから老人ホームに入居することをおすすめします。
具体的に「自立」(介護を必要としない)の状態でも受け入れ可能な施設にはどのような種類があるかは、以降の老人ホームの種類と概要で詳しく紹介しますので、以降の項を参考にしてください。
さて、老人ホームというと自立した生活が困難な方、介護の必要な方ばかりが暮らしているというイメージのある人も多いですが、決してそういうわけではありません。
現在、アクティブシニア向けに趣味のサポートをしたり、クラブ活動を行ったりするような老人ホームも多くみられるようになってきました。
入居のタイミングだけでなく、希望に沿った生活を叶えるには、自分に合った老人ホーム探しが必要といえるでしょう。これから先、どのような暮らしをしたいか、具体的に想像しながら老人ホームを探していくことが重要です。
そのために、実際に足を運んで老人ホームをしっかりと見極める必要があります。ただし、見学を行うにしても、1つ1つ施設を見て回るには体力を要するので、長期的な視野での計画も立てなければなりません。
元気なうちから老人ホームを探して決めておくことは、後々の安心を考えるとメリットとなるでしょう。
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老人ホーム選びのポイント
ご自身に合った老人ホームを見極めるには、どのような点に気をつければ良いのでしょう。老人ホーム選びのポイントは、2つあります。
希望する条件を決めておく
希望の条件としては、以下のような点を決めておきます。
・立地・エリア
老人ホームのある場所やエリアの条件です。たとえば、地元であれば住み慣れていて安心感があるというメリットがあります。家族の来訪のしやすさを考えた立地であれば、家族との面会がしやすくなるでしょう。どのような暮らしをしたいかを考えて希望の場所を決めます。
・イベント・サークル活動
日々の暮らしを楽しむためには、イベントやサークル活動の開催も重要でしょう。活動の頻度は適しているか、内容に興味をもてるかも確認しておきます。
・サービス内容
施設で利用できる介護サービスの内容、施設の清潔感など衛生管理状況、買い物代行などの生活支援が実施されているかなど、もよく見ておきましょう。サービス内容をしっかり確認しておくことで、入居後の希望とサービスのギャップを埋めることができます。
・医療体制・リハビリ体制
老人ホームは医療機関ではないため、基本的に医療行為は行われません。緊急時や持病を抱えている人に対してどのような対応が施設で可能か、医療機関との連携は十分か、リハビリを希望する場合は体制が整っているかも見ておきます。
・予算
預貯金や公的年金などの収入を洗い出し、60歳であれば少なくとも30年は無理なく暮らせる資金計画を立て、予算内で老人ホームを決定するようにします。
以上が、老人ホームを決める主なポイントですが、すべての条件に合った老人ホームを探そうとするとうまく見つからないかもしれません。老人ホームの決め手となるポイントに優先順位をつけておくと決めやすくなります。
たとえば、多少料金が高くても良いので地元の老人ホームに入居したいなど、条件を洗い出した上で譲れないポイントを決めて、老人ホームを探すようにすると入居までがスムーズです。
いくつかの施設を検討する
はじめから1つに絞らずに老人ホーム選びをすることもポイントです。
インターネットや老人ホームの公式サイトなど、今は老人ホームの情報にアクセスしやすくなっていますので、まずは情報や資料集めからはじめてみましょう。情報を集めて気になったものに絞ったほうが、手間も最小限で済み、希望に沿った条件で施設を絞ることができます。
次の項から、老人ホームを含めた高齢者向け施設の種類を見ていきましょう。
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高齢者住宅・施設は大きく3種類ある
高齢者住宅・施設は、「住宅型」と、施設系の「介護型施設」、「福祉型施設」の大きく3つに分けることができます。
①住宅型施設
住宅の契約がメインの高齢者向けに建設された建物です。住宅によっては生活支援込みのものもありますが、基本的には入居後、必要に応じて個別に生活支援や介護サービスを外部で契約する必要があります。
・施設系
住宅とサービスが一体になった施設。受けられるサービスは、生活支援を中心に介護サービスなど施設によってさまざまです。施設系の高齢者施設は、さらに介護型施設と福祉型施設に分けられます。
②介護型施設
いずれも要介護認定(※受け入れ可能な要介護度合いは施設によって異なります)を受けた介護度合いの高い方が対象で、介護保険施設と呼ばれます。介護保険の利用が可能です。
③福祉型施設
福祉を目的としており、施設によって異なりますが、自立、要支援、要介護、と幅広く高齢者を受け入れています。
以上、3つが主な高齢者住宅と施設の種類です。それぞれ具体的にどのような特徴の住宅や施設があるのか、次の項で詳しくみていきましょう。
住宅型施設の種類
住宅型には、主に2つの種類があります。サービス付き高齢者向け住宅と、分譲型シニアマンションです。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は「サ高住」と呼ばれ、バリアフリーなどの高齢者の住みやすさを重視した住宅です。賃貸契約を結び住居を利用します。
入居基準 |
・60歳以上で自立の方
・60歳未満で要介護や要支援の認定を受けている方 (配偶者、60歳以上の親族などとの同居可) |
サービス | 生活相談や生活支援 |
費用 |
・入居一時金は原則不要
・敷金2~3ヶ月 ・月額費用の目安 5~30万円 (※具体的な金額は施設で異なります。) |
提供されるサービスは主に生活相談などですが、介護サービス付き(食事などの介助や通院の付き添いなど)のものもあります。しかし、基本的に介護サービスを利用するには、外部との契約が必要です。なお、特定施設入居者生活介護の指定がある場合は、介護保険サービスの提供もあります。
分譲型シニアマンション
分譲型シニアマンションは、サービス付き高齢者向け住宅と異なり、住居スペースそのものを購入し、自身の所有とします。住居は購入者の所有物となるため、その後、売却や相続、他人へ賃貸として出すことも可能です。
なお、分譲型シニアマンションは、初期費用(入居一時金など)負担後、生活費や管理費などの月額料金を継続して負担する必要があります。サービス付き高齢者向け住宅も毎月費用が発生しますが、契約内容の違いもあり、支払いの内容は分譲型シニアマンションとは別ものです。
入居基準 |
・60歳以上で自立の方
・60歳未満で要介護や要支援の認定を受けている方 (配偶者、60歳以上の親族などとの同居可) |
サービス | 生活相談や生活支援 |
費用 |
・入居一時金は原則不要
・敷金2~3ヶ月 ・月額費用の目安 5~30万円 (※具体的な金額は施設で異なります。) |
介護型施設の種類
介護型施設の主な種類、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設を簡単に解説します。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、特養とも呼ばれ、自宅での生活が困難な方での入居が多いです。入居基準の介護度合いが高く、周りに介護できる方がいるかどうかも入居の条件として重視されます。終身に渡っての入居が可能です。
部屋の種類にはユニット個室の新型と、4人部屋の多床型である旧型があり、それぞれに目安の費用が異なります。
入居基準 | ・原則、要介護3以上で65歳以上の高齢者
・特定疾病のある40歳以上64歳以下の要介護3以上の方 |
サービス | 介護、食事、生活支援、アクティビティなど(※施設により多少差がある) |
費用 |
・入居一時金は原則不要
・月額費用の目安 新型は15~22万円、旧型は5~16万円 (※具体的な金額は施設で異なります。) |
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、老健とも呼ばれます。病院退院後の自宅復帰を目的とした施設で、要介護認定者が対象です。部屋は、特別養護老人ホームと同様旧型と新型があり、入所してリハビリを受けるほか、ショートステイやデイケアも可能です。
ただし、あくまで治療後のリハビリなどを目的とした施設のため、長期の入所はできません。原則入居できる期間は3ヶ月で、3ヶ月ごとに状態の確認と退所が判定されます。
また、医療ケアなどを提供する施設であるため、施設義務として入所定員100につき、少なくとも1人の医師が常駐しています。
入居基準 |
・原則、要介護1以上で65歳以上の高齢者
・特定疾病のある40歳以上64歳以下の要介護の方も入居できることがある ・基本的に3~6ヶ月程度の短期入所 |
サービス |
体調管理、リハビリ、医療ケア、介護、生活支援、
食事(定員100人以上で栄養士1人以上配置する必要がある) (※施設により多少差がある) |
費用 |
・入居一時金は原則不要
・月額費用の目安 9~20万円 (※具体的な金額は施設で異なります。) |
介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は、療養病床ともいわれ、要介護者で医学的管理が必要な高齢者のための施設です。医療サービスを提供することから、医師や看護師が常駐で配置されています。看取りやターミナルケア(終末医療において生活の質を重視したケア)も同時に行われているのが特徴です。
また、介護療養医療施設は2017年末に廃止となり、2023年までに全面的に廃止することが決定しています。そして、要介護者の長期療養を目的とした介護医療院が2018年4月に新しく創設されました。
入居基準 | ・医学的管理が必要と判断された要介護1以上の方
・原則65歳以上の高齢者(65歳未満でも要介護者は相談可) ・認知症の方の受け入れも施設によっては可能 |
サービス | リハビリ、医療的ケア、介護、食事、生活支援
(※施設により多少差がある) |
費用 |
・入居一時金は原則不要
・月額費用の目安 10~20万円 (※具体的な金額は施設で異なります。) |
福祉型施設の種類
福祉型施設には主に、ケアハウス、グループホーム、有料老人ホームなどがあります。
ケアハウス
ケアハウスは、軽費老人ホームともいい、食事提供のあるA型、自炊をするB型、食事と生活支援どちらのサービスも受けられるC型の3種があります。A型とB型の新設ができなくなったことから、C型が増え、C型のことを特にケアハウスと呼ぶこともあります。
ケアハウスには、自立を目的とした一般型、介護を目的とした介護型があり、提供されるサービスや入居基準は型によってさまざまです。部屋タイプも旧型と新型がありますが、基本的にはトイレやキッチンなどが揃った個室の新型が多いです。
入居基準 | ・A型とB型は60歳以上で月の所得34万円未満の方
・C型の一般型は60歳以上の方、介護型は65歳以上で要介護の方 |
サービス |
・一般型は食事や生活支援
・介護型は自立型サービス、介護、アクティビティ、健康管理 (※施設により多少差がある) |
費用 |
・入居一時金は0~数百万円
・月額費用の目安 10~30万円 (※一括払い可能な施設有、具体的な金額は施設で異なります。) |
グループホーム
グループホームは、認知症を発症した高齢者の受け入れに特化した介護施設であり、地域密着型のサービスです。利用は、住民票のある施設に限られます。
施設では共同生活を送ることになり、5~9人で1ユニット(最大9人)を組み、家事などを分担して生活します。ここに、介護スタッフが付く形です。
共同生活が基本で自立している必要があるため、医療ケアは実施されず、認知症の症状が進むと退去が必要なこともあります。
入居基準 | ・要支援2以上の(認定を受けた)65歳以上の高齢者、かつ認知症を発症している方
・施設の住所がある市町村に住民票があること |
サービス | 介護、食事、生活支援、アクティビティ(※施設により多少差がある) |
費用 |
・入居一時金は0~50万円
・月額費用の目安 12~25万円 (※具体的な金額は施設で異なります。) |
有料老人ホーム
有料老人ホームは、自立から要介護まで幅広い方を対象に(施設によって対象者は異なります)した介護施設です。介護付と住宅型、健康型の3つの種類があります。介護付き、ケア付きといった表示は、「特定施設入居者生活介護」の認定を受けていないとできません。
入居基準 |
・介護付と住宅型は60歳以上で自立や要介護、要支援などさまざま
(施設によって異なり、混合型も有) ・健康型は自立した60歳以上の方 |
サービス | ・介護付は介護、食事、生活支援、アクティビティ、健康管理
・住宅型は食事、生活支援、アクティビティ、健康管理 ・健康型は食事、生活支援、アクティビティ (※施設により多少差がある) |
費用 | ・入居一時金は0~数千万円
・月額費用の目安 15~30万円 (※具体的な金額は施設で異なります。) |
このように、老人ホームにはさまざまな種類があります。施設によっては入居条件が要介護に絞られるなど厳しい場合もあり、必ずしも希望の老人ホームに入居できるとは限りません。一般的には、入居条件が多様な有料老人ホームなどへの入居が視野に入るでしょう。
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老人ホーム入居までの一般的な流れ
ここまで、老人ホームはどのように選ぶべきか、どのような種類の施設があるか解説してきました。どのような施設が今後の生活スタイルに合っているか、想像がついたのではないでしょうか。
ここでは、老人ホームに入居する際に知っておきたい、入居までの一般的な流れを紹介します。
資料を取り寄せる
老人ホームのホームページに掲載されている情報などをもとに、興味をもった施設の資料を取り寄せます。資料請求はインターネットのほか、電話やメールで受け付けていることが一般的です。
パンフレットなど施設の資料が送られてきたら、自分の希望する条件を満たしているか確認します。
資料比較の段階で、体力面も考慮した老人ホームの見学計画を立てておくと良いでしょう。
見学に行く
資料でおおまかな内容を確認したら、実際に自身の目で良し悪しを計るために見学に行くことが一般的です。施設側の都合もありますので、余裕をもって見学の申し込みをしておきます。
見学に行くことのメリットは、資料だけでは分かりにくい、施設の清潔感やスタッフの対応、サービスの質など、生の情報を仕入れられることです。
見学に行く老人ホームは1つでなく、少なくとも2~3ヶ所ほど、比較できるようにしておくと良いでしょう。複数の老人ホームを見学することによって、より自身に合った老人ホームを見つけやすくなります。
なお、老人ホームの見学は60~90分程度かかることが多いです。質問したいことをあらかじめメモにまとめておく、撮影したい場合は許可を得ておくなど、事前準備をしておき、当日はしっかり見学できるようにしておきましょう。
契約に必要な書類を準備する
老人ホームへの入居を決めたら、入居のための仮押さえをします。一般的に契約に向けて老人ホームへの提出を求められることが多いのは、診療情報提供書や健康診断書などの書類です。
前者の診断情報提供書は主治医が、健康診断書は健康診断が行われたのちに発行されます。健康診断書に関しては取得までに時間がかかることも多いため、時間に余裕をもって、契約を決めたら早めに取得しておくようにしましょう。
なお、老人ホームによっては健康診断書の提出が求められないこともあります。契約に必要な書類に含まれているかどうかは、入居したい施設に必ず確認するようにしましょう。
契約する
入居審査などで特に問題がなく、入居の意思があれば、契約へと進みます。契約時に必要になるものが、戸籍謄本や住民票などの書類、印鑑です。
また、契約時には、本人の契約の意思確認(契約の締結)のほか、入居契約書や重要事項説明書、管理規程の説明を受けます。説明を受けるなかで少しでも疑問があれば、その都度質問するなど疑問点は契約の段階でしっかり解消しておきましょう。
老人ホーム入居にあたって施設側とトラブルになりやすいことは費用面です。基本料金のほかに費用がかかるケースの確認、退去時の原状回復(原状回復にかかる費用負担)など、負担の範囲についてはよく確認しておきましょう。
契約を締結すれば、あとは入居を待つのみです。
まとめ
高齢者向けの住宅・施設には、細かくみていくとさまざまな種類があります。
それぞれ入居条件やサービスなど、異なることが分かったのではないでしょうか。
老人ホームを探す際は、入居条件や希望するサービスをしっかりと絞り込むことが大切です。
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※こちらの記事は、2019年11月18日時点の情報をもとにした記事です。
№1910-11